一度は見送った、山口のあの子 ― 保健所に3兄弟で収容されていた「アル」

現在のアル。ハーネスをつけて座り、口を開けて笑っているような表情 シェアWan!

この体験談は、HOGOINU LANDの体験談募集フォーム「シェアWan」を通じて、ななこさんからお寄せいただいたものです。

HOGOINU-DATA
犬種:雑種
出身:山口県(幼い3兄弟で保健所に収容)
保護の経緯:山口県の保護団体に保護されたのち、東京の協力団体へ移動。2024年5月、譲渡会を経て神奈川県のななこさん宅へ
お迎え時の年齢:生後推定3か月半
現在の年齢:2歳

来る日も来る日も、里親募集サイトを見ていた

アルとの出会いは、里親募集サイトでした。

「来る日も来る日も里親募集サイトを見ていた中、目に留まり強く惹きつけられたのがアルでした」

アルは真冬に生まれ、幼い3兄弟だけで山口県の保健所に収容されていたところを、地元の保護団体に引き出されていました。

ただ、ななこさんが住むのは神奈川県。山口県との距離に、はじめは躊躇したといいます。

「私たちがもし手を挙げたら子犬と保護団体さんに移動負担をかけてしまうのと、まだ子犬なので地元で里親さんも決まりやすいのではと思ったためです」

その子のことは頭の片隅に置いたまま、関東で探し続けることにしました。

少し大きくなってるし、名前も違うけど

転機は、SNSで流れてきた東京の譲渡会情報でした。

「山口県のあの子の姿がありました。少し大きくなってるし名前も違うけど、きっとあの子に違いない。そう感じ、問い合わせをするとやはりあの幼い兄弟でした。山口で縁がつながらず東京の協力団体に移動していたのです」

そこからはすぐでした。譲渡会でお見合いをし、譲渡へ。2024年5月、生後推定3か月半のアルが、ななこさんの家にやってきました。

迎えて間もない頃のアル。椅子の脚のあいだからこちらを見上げる子犬

ななこさんは、アルがここに来るまでに関わった人たちのことを、こう書いています。

「真冬に生まれ、幼い兄弟だけで保健所にいたアル。よく生き抜いてくれたなと思います。東京の保護主さんをはじめ、地元保護団体さん、預かりボランティアさん、搬送してくださった方、そして産んでお乳をあげていたであろうお母さん。たくさんの人の力で命がつながりわが家にやってきてくれました」

ど真ん中で寝る、堂々っぷり

家に来たときのアルは、「とにかく天真爛漫なパピー」だったそうです。

「すぐには慣れないことも覚悟してたので、来た日から部屋を歩き回り、ど真ん中で寝る堂々っぷりに驚きつつ安堵しました」

月齢の若さに加えて、保護されてからシェルターでたくさんのボランティアさんや犬と関わり、のびのび過ごせていたことが大きかったのだろう、とななこさんは振り返ります。

キッチンのゲート越しに立つ、迎えた頃のアル

ただ、それは「懐っこい」というのとは少し違いました。

「くつろぎたいときは私たちからすぐ距離をとったり、散歩中もあまり関わったことのない人たち(お年寄りや子供)を警戒したりと、野犬らしさが成長とともに垣間見えるようになりました」

はじめてランに連れて行ったとき

柔軟に家になじんでいたアルの表情が、明確に変わった日があります。

「はじめてランに連れて行ったときです。思い切り走り、その後帰っても表情が生き生きしていたのを覚えています」

一方で、パピーから成長していく過程は、順調なことばかりではありませんでした。

「警戒心や主張、興奮が強まり、それに伴ってお散歩が不安定になった時期もありましたが、保護犬に詳しいトレーナーさんの力を借りて私たちが勉強して次第に整っていきました」

リードをつけて散歩中、こちらを振り向くアル

今も、初対面の人は苦手です。だからななこさんの家では、来客のときにアルが落ち着ける場所を別の階に用意しています。

「行き来は自由にしてあるので、大丈夫だと思えば近くにいてお客さんからおやつをもらえるときもあるし、大人数で緊張が高いときは別階に行き静かに寝ています。とにかく家の中はアルが安心できる空間があることを大事にしています」

そうした日常を重ねるうちに、家族が集まっていると輪の中に来たり、すぐ近くでくつろいだりする時間が確実に増えてきたそうです。

ソファのクッションに頭をのせて眠るアル

「保護犬と呼ばれる子たちがいない世界に」

保護犬と暮らしてよかったことを、ななこさんはこう書いています。

「お世話を通じて夫婦の絆も深まり、新しいお友達や体験ができたり、家族にだけ見せるくつろいだ姿にたくさんの幸せを感じています。目線やリアクションがまるで人みたいで思わずふふっと家族で笑ってしまうのも日常です」

そして、アルを迎えて強くなった思いがあるといいます。

「野犬や保護犬だからって何かが劣るなんてことはない。アルもそうだし、お友達をみていても魅力的な子ばかりの保護犬の世界をたくさんの人に知ってほしいなと思います」

「犬を迎えるって特別で大きな決断だと思います。だからその決断をする人間は責任を持って、その子自身をよくみて、その子の背景を調べ、終生までを考える。それが当たり前になり苦しむ犬のいない世界になってほしいです」

現在のアル。ハーネスをつけて座り、口を開けて笑っているような表情

山口の保健所で3兄弟だけで冬を越した子犬が、一度は距離を理由に見送られ、それでも東京で再び目の前に現れ、神奈川の家族の輪の中で眠っている。その間にあったのは、何人もの人の手と、「あの子に違いない」と感じた一瞬でした。

ななこさん、アルの2年間を聞かせてくださって、ありがとうございました。

写真提供:ななこさん


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