この体験談は、HOGOINU LANDの体験談募集フォーム「シェアWan」を通じて、みはるさんからお寄せいただいたものです。
HOGOINU-DATA
犬種:雑種(元野犬)
出身:山口県長門市
保護の経緯:父犬が先に、翌日に兄弟6匹が捕獲され、殺処分の対象となっていたところを保護(母犬は逃げたとみられる)
東京へ:搬送ボランティアの方が輸送、東京の預かりボランティア宅を経て里親募集へ
お迎え時の年齢:生後半年ごろ
現在の年齢:推定8歳
「飼うなら保護犬に」と、決めていた
みはるさんには、犬を迎えるとしたら保護犬にしよう、という気持ちが以前からありました。
「1匹でも殺処分から救うことができたらいいなと思っていました」
具体的にいつ、どの子を、という話ではありません。いつか犬と暮らすことがあるなら、そのときは——という、静かな前提のようなものでした。
その願いが、のちに一頭の子犬という、いちばん具体的なかたちで返ってくることを、このときはまだ知りません。

山口の山から、東京へ
キナリは、山口県長門市の野犬でした。
先に檻に入ったのは、お父さん犬だったそうです。そして翌日、6匹の兄弟がまとめて檻に入りました。キナリは、その6匹のうちの1頭です。
順番が、この話のすべてだと思います。お父さんが先に入り、子どもたちは翌日だった。
「お父さんが頑張って守ってくれてたんだ」
みはるさんは、そう受け止めています。お母さんは、逃げたようです。

捕獲された犬たちは、殺処分の対象。
キナリは、人に飼われた経験のない、生後半年ほどの子犬でした。
先に結末を書いてしまいます。このとき捕まった犬たちは、子どもたちより先に檻に入ったお父さんも、翌日にまとめて捕まった兄弟たちも、当時全員に里親が決まりました。一頭も欠けることなく、それぞれの家に行っています。
そこから東京までは、遠い道のりです。けれど、その距離を人がつなぎました。
東京で預かりボランティアとして手を挙げてくださった方がいて、搬送ボランティアの方が、山口から東京まで実際に運んでくださった。名前も知らない誰かが自分の時間と車を出してくれたから、キナリは東京にたどり着いています。
保護犬が家庭にたどり着くまでには、たいてい、こうして何人もの手が挟まっています。里親のもとに来た一頭の後ろには、その一頭を運んだ人、預かった人、募集をかけた人がいます。
ママ友が見せてくれた、一枚の写真
みはるさんのもとにキナリの話が届いたのは、ふとした立ち話からでした。
ママ友から「友達が里親募集してる子がいるよ」と声をかけられ、写真を見せてもらいます。
「一目惚れでした」
譲渡会でも、団体の募集ページでもなく、知り合いのそのまた知り合いから。保護犬との出会い方は一つではない、ということを、みはるさんのお話は静かに教えてくれます。
2日目の終わりの、大きな安心
家に来たキナリは、初めての場所で緊張していたのでしょう。なかなかおしっこをしてくれませんでした。
心配な時間が続きます。犬にとっても、迎えた側にとっても、最初の数日は手探りです。
そして2日目の終わり。キナリは、ようやく大量に排尿しました。
「嬉しかったです」
出てよかった、という安堵。うちに来て2日目の、ささやかで、けれど確かな一歩でした。

4日目、ソファーの隣で
野犬として生まれた子が、そう簡単に人に慣れるとはかぎりません。けれどキナリの場合は、そう長くかかりませんでした。
理由は二つあった、とみはるさんは見ています。ひとつは、キナリがまだ生後半年の赤ちゃんだったこと。もうひとつは、預かりボランティアのお宅で「人間は怖くない」ということを、すでに学んできてくれていたことです。
山から来た子犬が、東京の誰かの家で、人は怖くないと教わる。その時間があったからこそ、次の家でのスタートが変わりました。預かりボランティアという役割の意味が、ここにはっきり出ています。
迎えて4日目、キナリはソファーに登り、みはるさんの横にピッタリくっついてお昼寝をしました。
「無理に距離を縮めず、キナリのペースを尊重してたのが良かったのかなと思います」
ただ、みはるさんはこうも書き添えています。
「キナリの気持ちを尊重しすぎて、抱っこ嫌いを克服できなかったのは反省点です」
待つことと、慣れてもらうこと。そのバランスは、あとから振り返って初めて見えてくるものなのかもしれません。

思春期の息子たちと、キナリ
キナリが家に来たころ、みはるさんの息子さんたちは思春期の真っ只中でした。
イライラして、当たりが強くなる時期。どの家庭にもある光景です。
けれど、その息子さんたちが、キナリにだけは優しく接していました。
「その姿を見ると私も癒されてました」
犬が家族を変えた、という大げさな話ではないのだと思います。ただ、キナリがそこにいることで、その家にもう一つ、やわらかい場所ができた。息子さんたちにも、そこでだけは肩の力を抜ける相手ができた。そういうことなのでしょう。

家族の真ん中に
「家族の真ん中にキナリがいます。一緒に過ごす毎日が私達家族の宝物です」
みはるさんは、そう結んでくれました。

山口の山でお父さんが先に檻に入り、翌日に捕まった6匹のうちの1頭。一度は殺処分の対象として数えられた子犬が、いま東京の家のソファーで、家族の真ん中にいます。
その間には、保護した人、山口から東京まで運んだ人、預かって人の手のあたたかさを教えた人、そして「友達が里親募集してる子がいるよ」と声をかけたママ友がいました。そのいちばん最初に、子どもたちより先に檻に入ったお父さん犬がいます。
そのお父さんにも、一緒に捕まった兄弟たちにも、それぞれの家があります。山で暮らしていた一家は、ばらばらになったのではなく、それぞれの家族の真ん中に散っていきました。
「1匹でも殺処分から救うことができたらいいな」——みはるさんが漠然と抱いていた願いは、いま、抱っこは苦手だけれど隣でお昼寝はしてくれる一頭との、具体的な毎日になっています。

あなたの体験談も募集しています。里親さん・預かりボランティアとしての気づきや、日々の暮らしのことを、ぜひ聞かせてください。
キナリを保護した団体:認定NPO法人 ちびたまのしっぽ愛護会(山口県長門市東深川1383-1) https://chibitama.or.jp/
写真提供:認定NPO法人 ちびたまのしっぽ愛護会


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